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機械翻訳サミット2019:機械翻訳のステークホルダーが一同に会する

機械翻訳サミット2019 ローカライゼーションイベント

第17回機械翻訳サミットが、2019年8月19-23日にダブリンで開催された。本サミットでは、機械翻訳(以下MT)エキスパートからの有益な知見を提供してくれる興味深い発表やファンイベント、ならびに、さまざまな背景をもつ参加者による白熱した議論があり、研究発表から川辺でのダンスパーティーに至るまで終始多くの参加者で溢れていた。本サミットは、MTにおける最新の研究や進行中のプロジェクトの動向を知る機会を参加者に与えてくれた。

サミット開催直前には2日間のワークショップ・講習会が行われ、その後、研究、ユーザー、翻訳者、プロジェクトのそれぞれをテーマとした4つのトラックに分かれ、3日間の会議が実施された。研究トラックでは、MTのドメイン適応、話し言葉から書き言葉への変換、ポストエディットなど幅広いトピックが扱われた。本トラックで、人による翻訳とポストエディットの比較を行ったAntonio Toral氏が、本年度の最優秀プレゼンテーションを受賞した。ユーザートラックは、商業の分野でも広くMTが普及していることを反映し、実際のユーザーによる事例報告が行われ、特定ドメインのMT、ニューラルポストエディット、品質予測が主な話題として取り上げられた。ポスター発表ではすべてのトラックの話題が扱われ、発表者と参加者、あるいは、参加者同士による意見交換が行われた。

本年度のMTサミットでは新たな試みとして翻訳者トラックが加わった。従来のサミットでは、研究者、ユーザー、ベンダーのみに注目が集まっていたが、翻訳者トラックが追加されたことにより、すでに幅広い内容を扱っていた会議に、新たな視点が加わっただけでなく、議論をより活発なものにした。私たちは、翻訳者トラックで共同議長を務めたCelia Rico氏とFederico Gaspari氏にインタビューを行い、MTサミットの様子、翻訳者がサミットから学べるものは何か、また、翻訳者に2021年のサミットへの参加を勧める理由について伺った。

本年度のサミットに翻訳者トラックを加えた理由は何ですか?

この刺激的な進展のきっかけとなったのは、スペイン・アリカンテで約1年前に開催されたヨーロッパ機械翻訳協会会議(European Association for Machine Translation: EAMT )での成功でした。現代のMTについての議論にはさまざまな面がありますが、その会議で翻訳者に特化したトラックを設けたことで、重要かつ新しい切り口が議論に加わりました。

MTサミットプログラムにトラックを新設した目的は何でしたか?

翻訳者トラックを新設した目的は、研究者、開発者、ベンダー、翻訳テクノロジーのユーザーだけでなく、翻訳者にも彼らと対等の立場でMTの議論に参加してもらうことにありました。置き去りにされてきた翻訳者の声に耳を傾け、はっきりした意見を聞く良い機会だと我々は考えたのです。このような目的のもとに、言語と翻訳のプロである翻訳者が日常的に直面しつつある問題について、関心を集めるトピックを中心に取り上げました。その中に、生産性の評価とMTによるその影響、ならびに、実務翻訳におけるMTの役割(翻訳価格の問題、プロの翻訳者のポストエディット案件に対する受け入れ度合い)といった話題だけでなく、MTを活用する際の翻訳者倫理と守秘義務といった問題や、MTの導入に対する先入観や態度などの心理社会的な問題も盛り込みました。

翻訳者に次回のサミットへの参加を勧める理由は何ですか?

翻訳テクノロジーにとって、今が一番注目すべき時期です。特にMTについては、旧パラダイムで用いられていた統計的アプローチが大幅に改善され、将来有望なニューラル・アプローチが現れたからです。どんなテクノロジーにも言えることですが、翻訳ツールの発展の過程に関わる人々のニーズや要望に応じることで、翻訳ツールの発展は形作られます。もしどのような開発を行うかという意思決定が、コンピューター分野の科学者、プログラマー、エンジニア、あるいは、ビジネスリーダーに完全に委ねられたとしたら、開発のほとんどの部分がMTに左右されることでしょう。翻訳者に、従来から幅広い話題を扱い、多くの関係者が参加するMTサミットのような国際会議に参加してもらうことには、翻訳者と我々の双方にとって意義があります。ひとつは、翻訳者がテクノロジーの実態や本質的な弱点についての理解する機会になるという点です。この点は話題にはよく出ますが、実際はあまり理解されていない点です。他方で、翻訳のプロのニーズや要請を取り入れることは長期的な開発にとってプラスになります。そう我々は強く信じています。

翻訳者トラックは成功だったと言えますか?

翻訳者トラックでは、関係機関、産業、フリーランサーを代表するメンバーが集結しました。彼らに、MTを導入した実務翻訳の問題(どのように翻訳のプロセスが影響を受けるか、翻訳者がポストエディターとしての新たな役割を担う必要があるのか、価格と生産性に重圧を与えるものにはどのような要因があるか)について、意見や懸念を述べてもらいました。これらはすでに馴染みのあるトピックですが、従来とは異なり、他のMTステークホルダーを交えた議論を本格的に行いました。2日間にわたり、口頭発表用の大会議室は常に満員でした。本トラックへの高い関心の表れだと考えています。ポスター発表に選出された研究発表も同様に、大きな関心を集め、参加者同士で意見を交わしていました。今回の取り組みが議論を深めただけでなく、翻訳者を交えたMTの議論を促進することに良いタイミングで大きく貢献できたと感じています。この傾向が今後にも引き継がれることを望んでいます。

結論

今年のMTサミットは、あらゆる関連分野のステークホルダーが一同に会し、MTの課題や可能性、および、今後の発展について議論が行われた。さらに、会議内外で同業者同士が交流する場としても素晴らしい機会であった。次回のMTサミットは、2021年にシアトルでの開催が予定されている。直近では、来年リズボンでEAMT年次会議が開催されます。

研究発表の内容をさらに詳しく知りたい方は、MTサミット2019議事録をご覧ください。

多くの知見を提供してくれたCelia Rico氏、Federico Gaspari氏に、改めて感謝を申し上げます。

ポストエディットする前に機械翻訳の品質スコアを評価する。

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執筆:Lara-Ashleigh Pieterse
執筆:Lara-Ashleigh Pieterse

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